
プッシュアップ は自重トレーニングで鍛える人にとっては非常にポピュラーなものです。学生時代に体育の時間や部活動(運動部)でほぼ必ずと言っていいほど、人生で一度は経験する鍛え方です。
プリズナートレーニング でも例外なく上半身のトレーニングとして採用されているのですが、初期のトレーニングは負荷が軽くて物足りないというトレーニーの人も多いと思います。
それもそのはず、このトレーニングを効果的に行うには、ちょっとしたコツが必要なのです。
速度やフォームをしっかり守る
プリズナートレーニングに限らず、回数や重さにこだわるトレーニーは多いと思います。
ステップ1のウォール・プッシュアップについては、マシントレーニングでガンガン鍛えているベテラントレーニーにとっては、トレーニングに含んでいいのかどうかというレベルでしょう。
「こんなの100回だってできるぞ!」という声が聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか。
100回できるというコメントが出てくること自体、回数にこだわっているのではないかという気がしてきますが、トレーニングで大切なのは回数がたくさんできることではなく、どれだけ筋肉に効いているかということです。
別にプッシュアップが500回できなくても、適切なフォームで5回行ってしっかり筋肉が疲労していればそれでもいいのです。
むしろ、少ない回数で効果的に筋肉が疲労すれば、効果的なトレーニングが短時間で終えられるのですから効率的ですよね。現代人は時間がないからね。
少ない回数で効果的に鍛えようとすれば、運動の速度やフォームはきちんと見直す必要があります。
プリズナートレーニングでは 2秒で動いて1秒止まる というのを決まりとしています。これを無視して回数にこだわるのは、人に話す時に格好はいいかもしれませんが非効率的ですね。
フォームについても、「肩幅に広げる」と書かれていますからその通りに実施します。プッシュアップは広げる腕の幅によって効かせる筋肉を変えられるという自由度の高さも魅力ですが、初期のプリズナートレーニングに関しては肩幅です。
おそらく、マスターステップであるステップ10の ワンアーム・プッシュアップ を最終的なターゲットとしていることがその理由だと思いますが、この方法だと肘を伸ばす筋肉である上腕三頭筋に負荷がかかりやすい印象があります。
人によって効く筋肉は違ってくると思いますが、最終的に片手で腕立て伏せができるようになりたければ、やはり腕を広げたプッシュアップは避けるべきです。
身体を持ち上げるのではなく地面を押すイメージで
プッシュアップという言葉は、「プッシュ」と「アップ」が合わさっています。動作の特性上、身体を何回持ち上げられるかという「アップ」のイメージで運動している人が多いと思います。
アップではなく、「プッシュ」の方に着目してみましょう。つまり、地面を力強く押すことの反作用で、逆に身体が持ち上がるという考え方です。
持ち上げるのと持ち上がるのは、結果からすると同じ動作になりますが、内容が全然違います。
個人的な感想としては、身体を持ち上げるイメージだと自分が得意な筋肉で行ってしまいがちです。
一方で、床を押したら反作用で身体が持ち上がったというイメージだと、プッシュアップに関与するあらゆる筋肉が総動員されやすい印象です。
筋肉をパーツごとに鍛えるのであれば、ターゲットとなる筋肉に効果的に効かせるために身体を持ち上げる方法を使うのもいいでしょう。
プリズナートレーニングでは、逆に複数の筋肉を総動員してパフォーマンスを高める鍛え方となりますので、地面を押す方がそれに近づきます。
また、押すことに関与する筋肉というのは、体幹にまで波及します。
身体を持ち上げるタイプだと、負荷が自分の体重以下ということになります。比較的軽いため、どうしても腕の筋肉で動作を行おうとすることから体幹をまっすぐに固定することを困難にします。
地面を押すイメージだと、かなり強力な筋肉がないと地球を押し下げることができないため、体幹を安定させて強い筋肉の連携を生み出します。体幹をまっすぐに保ちやすいのです。
これは、スクワットなどの他の種目でも意識できるポイントです。
限界までトレーニングをしないでその手前でやめる
さて、ここまでの注意点を守ると、初期のステップのトレーニングでもある程度は筋肉に適切な量と質の刺激を与えることができます。
ベテランのトレーニーでも筋肉が程よくパンプして、少なくともちょうど良いウォーミングアップになるのではないかと思います。
一方で、もともとそれほどトレーニング経験がなくて、筋力にあまり自信がないトレーニーにとっては逆に決められた回数やセット数をこなせないという人もいると思います。
そういう人ほど姿勢を保つためのインナーマッスルも弱いため、少ない回数でフォームが崩れ、無意識に自分が一番得意な筋肉で継続して回数をこなそうとします。
先ほども述べたように、正しいフォームというのは何より大切なものですから、フォームが崩れた(正しいフォームを維持できなくなった)時点でトレーニングは終了すべきです。
つまり、限界までトレーニングするのではなく、フォームが崩れてしまいそうになる7割程度のところで止めるのです。
「まだ何回かできそうだけど、フォームが崩れてきそうな気配を感じるからやめておこう」という程度がちょうどいいです。
まだ頑張ればできそうなのにやめてしまうのは不完全燃焼な感じがして、しっかりとトレーニングした感じがしないのでモヤモヤした気持ちが残ることでしょう。
でも不思議なことに、正確なフォームにこだわって7割程度でやめておいた方が成長が早いです。
逆に無理やり回数をこなすような鍛え方だと、得意な筋肉ばかりが成長するだけで不得意な(もともと非常に弱い状態の)筋肉の成長が非常に遅れるばかりか、関節や靭帯に偏った負荷を与えてしまい、負傷してしまう可能性が高まります。
最近では高齢者が健康を保つために行う運動であれば、マシンや器具を使う方法よりも自重トレーニングが最適だという意見を耳にしますが、自重トレーニングであっても高齢者が限界までトレーニングを行うというのは非現実的ですよね。
ラジオ体操のような程よい(決して楽ではない)程度の運動が、実はバランス良く身体能力を向上させる最良の方法なんでしょうね。
最近のスポーツ医学では、「筋肥大が目的なら限界まで追い込むべきだけど、筋力増強が目的なら限界の手前で終えた方が効果がやや高い」というふうに言われています。
プリズナートレーニングでは筋肥大ではなく筋力増強を目的にしています。なので、限界まで行うというのは効率が悪いばかりか、怪我などのデメリットの方が大きいということなんですね。
ライフワークにするなら物足りないくらいで十分だよ
トレーニングに終わりはありません。もしワンアーム・プッシュアップができるようになったとしても、トレーニングをやめてしまったら衰えてしまうわけですし、「人生100歳時代」を心身ともに健康で過ごすためには、逆にトレーニングをやめない方がいいでしょう。
高齢者であれば、何もしなければ1年に1%ずつ筋力が低下すると言われています。健康で長生きするにはある程度の努力が必要なのです。
これから何十年もトレーニングを継続して、朝起きたら歯を磨くように自然に生活に溶け込んでいくことを目的に運動を習慣化していこうと思うなら、来る日も来る日も限界まで追い込んでいては継続できません。
それどころか、血圧が上がって脳出血になったとか、不健康な方向に向かいかねません。
「健康で長生きするために限界まで追い込まない程度の程よいトレーニングを継続していたら筋力がどんどん強くなっていき、気がついたら片手で腕立て伏せしていたよ」というのが理想です。
プリズナートレーニングはそういったライフスタイルを叶えてくれる、魅力的なトレーニングなのですから、是非とも適切に注意点を思い出し、無理のない(そして効果的な)トレーニングライフを身につけてもらいたいですね。
【お知らせ】私がプリズナートレーニングに出会ってから2年以上の取り組みで感じたことや体感した気づきをまとめた記事を書きました↓
参考:プリズナートレーニングを実践して得た効果や実感したことや気づきのまとめ
よろしかったら読んでみてくださいね。
Posted by Atsushi(@Atsushi_k0)
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