
これを読んでもらうことで一連の流れがつかめてくると思いますし、要所ごとの詳細はそれぞれの記事に書いてありますので、備忘録としても使えます。
半年にわたる奮闘の様子が皆さんに伝わるといいなぁと思います。
兼業農家は連休を利用しないと田植えがかなり難しい

小さいころは、なぜどこにも遊びに連れて行ってくれないのかと不満が多かったですが、大人になるとその理由がわかります。
我が家では兼業で農業をしていますからはっきり言って毎年赤字です。しかもそこそこの重労働です。
ただ、棚田は一度荒らしてしまうとほぼ元には戻せなくなりますので、米を育て続ける必要があるのと、一年間は米の心配をせずに暮らせる安心感があります。
本人が作っていますから安心安全な米であることは間違いないのですから、視点を変えればこれほど贅沢のことはないのかもしれませんね。
参考:稲作農業を営む私の実家はゴールデンウィークから本格始動 | 歳月庵
山間部の棚田には苦労がいっぱい

平地の田んぼと違い、畦道(あぜみち)が細くて大きな機械は入れませんし、雑草の根っこを枯らしてしまうと田んぼの強度が落ちますから除草剤も使えません。
一枚の田んぼの面積も平地のそれと比べるとどうしても小さくなりますので、草刈りなどの作業量も増えますしね。
でも山の綺麗な空気と水で育てたお米にはその労力に見合っただけの価値があると思います。
水の管理で苗を定着させ、増やしていく

これは専門書を読んだりインターネットで情報を集めたりする程度ではできませんね。経験とか勘も働かせて臨機応変に対応しないといけません。
しかも山間部は草とか葉っぱが水路に詰まると大変です。人間で言うところの脳梗塞や心筋梗塞の状態になり全滅しますので、旅行にも行けません。
ゴールデンウイークもそうですが、農繁期になると旅行に行けないとなると、半年間はどこにも行けないということに等しいわけですから、子供には辛いですね。
育成を見守るのは農家の醍醐味
私はスーパーで購入した根っこ付きのネギとか豆苗を再び育てるというのが好きです。べつに何でもいいのですが、植物の育つ過程を追っていくというのが楽しいです。
すぐに結果は出ませんが、確実に大きくなっていくのをみているとワクワクしませんか? これは農業の醍醐味でしょう。
自分の仕事が目に見える形で返ってくるのですから、やりがいはありますね。
稲刈り作業もチームプレーが大切
平地の田んぼだと大きな機械で稲刈りと稲こぎが同時にできるのですが、畦道の細い棚田では手押しタイプで刈る作業と、別の機械で稲こぎする作業を分けなければ難しいでしょう。
そうなると、日程的に厳しくなりますので、我が家では昔ながらの「稲木干し」も行っています。
本来ならお米の美味しさを余すことなく引き出すための行程ですので、この少子高齢化で後継者不足の現代では可能であれば省略してしまいたい作業だと思うのですが、逆にいいクッションになっています。
参考:いよいよ稲刈り始動!極早稲品種のコシヒカリを我が家では早い時期から刈る | 歳月庵
稲木干しは我が家のこだわりポイント
稲穂に溜まった栄養を余すことなくお米に落とすのがこの行程ですが、先述したように我が家では刈った稲を地面に置きっ放しにしておくことで根を張ることがないように、宙に浮かす作業でもあります。
週末のみの兼業農家では、稲刈りしてから稲こぎするまでの間が1週間は空いてしまいますので、その間にお米から根っこが生えてしまうと食べられません。
台風で稲が倒れるということはこのリスクもありますので農家にとっては重大な事件なのです。
参考:稲刈りしたら天日に干す「稲木干し」の作業を惜しまないことでお米はさらに美味しくなる | 歳月庵
農業もクライマックス、稲こぎの行程でいったん作業を終える人もいる
稲こぎとは、稲に実っている籾殻(もみがら)の付いたお米を稲と分離する作業です。
籾殻のついたお米は少し取り分けておいて、こだわっている農家だと翌年に自家で発芽させて苗を育成するということもやっています。
我が家でも以前はそれをやっていましたが、管理が非常にシビアなので兼業では難しいと断念しました。
また、お米の保存方法としても籾殻をつけた状態で保管する方が1〜2年は新米の鮮度を保てるということで、こだわっている人はそのまま保管して、食べる分だけ籾殻を外す籾摺り(もみすり)という行程を行うという人もいます。
しかしインフラがほとんど整備されていませんので、農家の特権ということになりますね。
参考:我が家のコシヒカリは「稲木干し」の期間を終えていよいよ「稲こぎ」の行程へ | 歳月庵
我が家では玄米で保管するために籾摺りまで実施して全行程を終了
この行程を終えると、新米が食べられる状態になります。とはいっても、籾殻を外しただけなら玄米の状態です。
玄米で食べる人もいますが、我が家では白米にして食べますから保存の方法としては玄米保存ですね。
白米にしてしまうと、美味しく食べられる期間が一気に短くなるので、我が家では30kgの袋をその都度精米しています。
参考: 「籾摺り」の行程を経て今年も我が家に待望の新米コシヒカリが到来! | 歳月庵
農家の醍醐味は新米一番乗り!新米コシヒカリを食す!!
この瞬間のために農業をしているといっても過言ではないのです。努力して得られた秋の実りをすぐに頂けるのは農家の特権ですし、何よりの楽しみです。
ただ、新米は水加減が難しく、その年によって少なめにしたり、目盛り通りに炊いたりと定まりません。なので我が家では一回目はほぼ固めか柔らかめかのどちらかです。
ちなみに実家の母は、今年は目盛り通りに炊いてみたところ、ちょうどいい炊き上がりになったと大満足の様子でした。
参考:新米の味や炊くときの水加減はその年によって違うよ | 歳月庵
お米を一粒残さず大切に食べよう
お米って一粒だけを育成することができない作物です。なので見方を変えれば、この一粒を育成するために多大な労力と犠牲を払っているのです。
もちろん消費者の立場から言うと「対価を払っているのだから購入したものをどう食べようと自由だ」とも言えますが、その背景にはこれだけのドラマがあると思えば、やはり最後の一粒も残さずに食べようと思えるはず。
農家の目線で語るなら、この一粒に農家の全てが凝縮されています。
このブログの記事を読むことで、その背景にあるドラマを感じながら、秋の実りを頂いてみて欲しいと思います。
稲作だけではなく他のどの農作物でも、魚でも、肉でも、何でも同じです。
お金を払えば食卓に食べ物が並ぶのが当たり前という感覚からもう一歩前へ進んでみて欲しいというのが、すべての農家の共通の想いなんじゃないかとすら思っています。
収穫の後は来年を見越してさっそく準備に取りかかる
収穫の喜びもつかの間、早くも今年の農業の後始末と来年の準備を兼ねて、藁(わら)を切ります。これはその専用の機械です。
左の方から収穫後の落ちている藁を投げ入れると、機械内部の高速カッターが藁を切り刻みます。
切り刻んだ藁は機械の前方から噴出されます。これを繰り返して「切り刻んだ藁の山」をまんべんなく作っていきます。
最後にムラなくバラまいて敷き詰めれば、来年の稲作のための下準備になります。藁が腐葉土のように肥料となり、田んぼの槌を肥やしていきます。
農家によっては火をつけて「焼畑農業」をする人もいます。 あとは来年の4月までに必要に応じて土を耕し、コンディションを整えつつ冬を越します。
こうしてみると稲作農家のオフシーズンはあまり長くはありませんね。ともあれ、今年の百姓もお疲れ様でした。